パソコン自作・修理セミナー(ダイジェスト版)

パソコン自作・修理セミナー(無料)

PCのカスタマイズとアップグレード

クリエイター職のPC環境は、5年前後で見直すタイミングがある
以前よりリクエストや質問が多く寄せられていた、デザイナーやエンジニアの皆様のご期待に応えるべく、受講生限定の無料セミナーとして2018年3月31日に満を持して開催しました。

毎年春は、はじめてのデザイン入門セミナー(無料)を新受講生向きに開催していましたが、近年は法人のデザインやシステム担当者や、プロのクリエイターの受講生の割合が増えていることもあり、ショップ店員並みにパソコンに詳しい方もしくは、パソコンを自作したことのある方を対象とした、非常にマニア向きの内容にしました。

これだけマニア向きにも関わらず、多くお集まりくださいまして誠にありがとうございました。セミナー当日よりだいぶ時間が経過してしまいましたが、手元の部品がよく見えなかったり商品名を控え忘れてしまった方は、こちらのダイジェスト版をご覧ください。

ここで登場する周辺機器や部品は、快適な仕事環境を確保し、アップグレードするのにとても重要です。個人なら毎回まっさらPCへ買い替えるのが手っ取り早いのですが、法人は何台も同時購入や複数台の同時移行にかかるコストや時間は現実的ではありません。またいたずらにOSやアプリケーションソフトのアップデートを許す訳にはいかない事情もあります。全く新しいPCへ移行できないアプリケーションソフト、フォント、ドライバーなど各社の現場の事情は様々です。そこで必要な知識と部品さえあれば、現在のPCの環境と筐体で、最新PC同等のスペックを安価に手に入れることができると言うものです。例えば、年々肥大化するHDD内の作業用データや素材データは、ちょっとしたリペアにより、より安全により安価により円滑にバックアップしたいという現場の声(悲鳴)だって簡単に解決することができます。自作慣れしている上級者の方は好きなだけ魔改造を楽しんでください。


まずはPCの筐体選びから

将来、PCのカスタマイズやアップグレードを予定している方は、必ずミニタワー以上、できればフルタワータイプの筐体(PCケース)をお選びください。一方、PCパワーを必要としない一般的な用途の方は、スリムタワー、ノート、ネットブック、モタニー一体型などコンパクト設計のPCが経済的かつ省スペースでお奨めです。しかしコンパクト設計のPCは、後々手が加えられない造りになっているため、カスタマイズやアップグレードはほぼ不可能とお考えください。基本的に、故障したらメーカー修理か買い替えるという2択になります。

では写真のように手前側のミニタワーや、奥手側のフルタワータイプのように、わざわざ大げさに場所を取り、重い重量で、消費電力が多く、ファンなど動作音の大きな筐体を選ぶ最大のメリットは、後々の保険後々の経済性だと言えるでしょう。特にフルタワータイプは改造何でもありの筐体内の空間と拡張性を確保できるため、いくらでもお好みのカスタマイズが行えます。理系の方は迷わずコレに決まりですね。

「GeForce GTX 1060」というモデルの GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の搭載したミニタワーのPC背面です。GPU については後述します。ご覧の通り、出力端子は DVIx1、HDMIx1、DisplayPortx3 となっており、実質4台まで同時出力できます。これがマルチモニター化です。マルチモニターについては後述します。

これだけ大きな GPU を搭載し、多くの出力端子があっても拡張ベイが2つ余っているので、まだ余裕があるのが分かります。写真はSSD×1(側面に設置)、HHD×1(底面に床置き)ですが、起動ディスクのみSSDにした仕様なので、ミニタワーでも筐体内は十分な空間を確保しているのが分かります。

アップグレード(交換)するGPU選び

GeForce GTX 1070 Ti



4Kや30インチ以上の高解像度な大型モニターや、マルチモニターへ出力(表示)するには、ハイスペックな GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)が必要です。またはグラフィックボード=グラボと言います。これがPC部品や周辺機器の中でも一番高価と言ってよいでしょう。ハイスペックなGPUだけで、PC何台分もの金額になってしまいます。

30インチモニター×1台~2台なら、一番下の写真のようなエントリー~ミドルスペックのATI(AMD)製「Radeon HD 6670」やNVIDIA 製「GeForce GTX 560Ti」で間に合いますが、サウンドクリエイター、映像クリエイター、デイトレーダーの方は3~6台で、4K対応や、マルチモニター化を求めます。そこで、NVIDIA 製で言うところの写真のような「GeForce GTX 1050Ti」「GeForce GTX 1060 6G」「GeForce GTX 1070 Ti」クラスがお奨めと言えます。近年人気のeスポーツオンラインゲームにおいては、CPUだけではなく、GPUの性能差がゲームの勝敗や優劣を決定してしまうため、よりハイスペックなGPUを求めるプロゲーマーにとってはここが肝と言えます。

また昨年末までは、仮想通貨(暗号通貨)のマイニング(採掘)の人気化により、ハイスペックなGPUが軒並み完売・在庫切れになり価格急騰や中古品が超高額で転売されるようになり話題になりました。今年になりそれも落ち着きましたが、元々高額な商品に変わりないので、適切なスペックのGPUを慎重に選んでください。なお、「GeForce GTX 1060」の 6G モデル以上の GPU を所有されているクリエイターの方は、空き時間や就寝中に十分マイニングできますので試してみるのも良いでしょう。ただし適切なチューニングを行わないと、報酬よりも高い電気代に負けてしまいますのでご注意ください(マイニングできても利益が出るとは限りません)。年初まではまだ魅力的なお小遣い稼ぎでしたが、今となっては仮想通貨の価格自体が暴落しているため、もはやどのようなチューニングも採算を確保するのは非現実的となってしまいました。セミナーの本題から外れてしまいますが、意外と質問が多かったので改めてお話ししますと、日本国内の電気料金で、かつPCレベルのマイニングは無理がありますので期待しないでください。

GPUの取り付け例


GPUは「GeForce GTX 1050Ti」。筐体はフルタワーの場合のPC内部の様子。上の写真は GPU なし。下の写真は GPU あり(取り付け後)。HDDベイが5つあり、拡張ベイが5つ余っているのが分かります。これだけスペースがあると、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)をアップグレードして大型のCPUクーラーや大型の電源ユニットを取り付けることもできます。


GeForce GTX 1060

GPUは「GeForce GTX 1060」。筐体はミニタワーのPC内部の様子。ATX対応のフルタワーに比べると、PC内部が窮屈になるのでメンテナンス性、拡張性を犠牲にしますが、ご覧のように大きめのGPU「GeForce GTX 1060」を装備しても、ストレージはSSD×1(側面に設置)、HHD×1(底面に床置き)を稼働できるスペースを十分に確保できます。

さようなら「HDD」、高速・無音のストレージ「SSD」へ乗り換え



SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)は次世代のHDD(ハードディスク)。フラッシュメモリを採用しているため物理的な動作をする部分がありません。起動ディスクとして利用できる、大容量のUSBメモリーと言えば、なんとなく構造を想像できるでしょうか?

圧倒的な読み込みスピードはもちろんのこと、省スペース化に省電力化など、メリットしかないくらいの商品ですが、登場して間もない規格の記録装置なので、何年安定して稼働するのか未知数のため耐久性能の心配があるのと、HDDに比べて桁違いの高額商品です。写真の 1TB で 4万円程です。HDD なら5千円程ですからね。メモリやストレージは新商品でも年々安価になってくれるので、もう少し待てば 1TB 以上クラスの SSD も今の半額の水準になっているのかもしれません。

PCを使い続けていくと記録装置の残り容量が徐々に少なくなっていき、OSの起動や動作も重く鈍くなっていき、保存やデータ移動だけでも待ち時間が長くなっていき、明らかに年々生産性を落としていきます。起動ディスクをSSDに取り換えるだけで、最新世代の新品PCと遜色ないくらいのスピードを手に入れることができます。時は金なりですよね。これだけでデザイナーやエンジニアは、1日あたりの残業を1時間軽減できることでしょう。

高速・無音のストレージ「SSD」をPCへ内臓するには



デスクトップPCの3.5インチのHDDベイへ接続(マウント)するには、2.5インチのSSD → 3.5インチのHDDベイへ接続するマウンターが必要です。写真の商品は更に電源やSATA端子が付いたもので、PCを選ばず汎用性が高くお奨めできます。電源やSATA端子が付いていない安価なノーブランドのものが沢山ありますが、PC内部の環境を選び使いまわしがきかない恐れがありますので、ネジ位置やケーブルの取り回しも含め慎重に選ぶ必要があります。

SATAケーブル(シリアルATA3.0ケーブル)も取り替えます

SSDへ乗り換える場合、シリアルATA3.0規格対応のSSDのスピードを生かせるケーブルが必要です。更に取り回しや配線のしやすい、L型0.7mタイプをお奨めします。PCの筐体によってはL型が邪魔になる場合もあるのでご注意ください。ケーブルが長い分には困ることはないでしょう。短いと致命的ですからね。

最速スペックの SSD M.2 もある

予算が許せば、とても高額ですが、PCIe NVMe Gen 3 接続できる SSD M.2 が存在します。起動ディスクも増設ディスクもすべて SSD M.2 にすると、PCはこれ以上はない驚異的なスピードを手に入れることができる。ただしPCのマザーボード及び筐体が対応している必要があります。

このように小型でRAMのような形状なのがSSD M.2。起動ディスクへ採用する場合はそのままマザーボードへ。
最速スペックの SSD M.2

増設ディスクとして採用する場合は PCIe スロットへ接続(マウント)するため、ヒートシンク付きアダプタカードを使用します。このアダプタでマウントするメリットは SSD を2枚付けできるデュアル仕様というのと、SSD M.2はSSDより高温になるため、大きなヒートシンクの存在も安心できます。PCIe x 4 / x8 / x16 スロットをサポートしています。
最速スペックの SSD M.2

写真は DELL XPS 8930 スペシャルエディションの筐体です。ミニタワーながら十分な拡張性があり、GPU(GeForce GTX 1060)下の空間にも余裕があるのが分かります。
最速スペックの SSD M.2

GPU(GeForce GTX 1060)下の PCIe x 4 へ増設しました。
最速スペックの SSD M.2

裏技!SSD M.2 を USB3.0 メモリへ変身

写真のように、SSD M.2 を USB3.0 メモリケースに収納することで、USB3.0 規格に対してあまりにもオーバースペックですが、USB3.0 規格を一切のロスなく、最大限に活かした化け物USBメモリとして使用できます。市販品のUSBメモリのスピード不足にストレスを感じるクリエイターにとっては、一度使うと止められない裏技デバイスになることでしょう。

SSD M.2 を USB3.0 メモリへ変身
SSD M.2 を USB3.0 メモリへ変身
SSD M.2 を USB3.0 メモリへ変身
SSD M.2 を USB3.0 メモリへ変身

余ったHDDは裸族のお立ち台でマウントし、USB3.0規格の外付けHDDへ



取り外したHDD、余っているHDD、かつてはサーバーだったHDD、ノートPCやポータブルタイプの小さいサイズ(2.5インチ)のHDDなど、ユーザー歴が長い分、稼働していないHDDは年々増加していきます。HDDの寿命を考えると10年以上の利用は危険領域なので、異音のない安定稼働している10年未満のHDDなら、通称裸族のお立ち台と呼ばれているHDDスタンドを活用しましょう。専用アプリ不要でクローンバックアップディスク作成も楽々行えます。長押しワンクリックするだけです。

USB 3.0 接続なので、従来の USB 2.0 に比べて10倍以上も高速になります。高速なデータ転送速度ストレージに姿を変えた外付けHDDとして完全復活です。一番下の写真は4TBのHDD×2つを差し込んだ状態です。ご覧の通り裸姿のまま立たせたまま利用するので、衝撃、埃、静電気など扱いには注意が必要です。

NASや小規模オフィスの共有サーバーでも

NAS(ネットワーク接続ハードディスク)や RAID(リダンダント・アレイ・オブ・インエクスペンシブ・ディスクズ)など共有サーバーとして稼働しているHDDを入れ替えるだけで、社内のデータ移動やバックアップ作業は大幅に時短できます。またデータ容量アップやデータ転送速度アップにもなるため、HDDの入れ替え作業は様々な場面でメリットがあります。スピードや信頼性が求められるRAIDを現役引退したHDDも、前述の裸族のお立ち台があれば、外付けHDDとして職場復帰できます。

さらにメモリの増設や使いまわしや、壊れやすい光学ドライブ(CD・DVD)のバックアップも定番なのでお忘れなく。PCを自作するにしても、修理するにしても、今まで蓄えたバックアップ部品がものを言います。メーカ修理の場合は往復5~10営業日もかかるため、個人のクリエイターなら10日間も業務停止となってしまいます。必要な交換部品さえ把握できていれば、手持ちの在庫か新商品を取り寄せ、即日復旧が容易なのです。リペアの知識があるとないとでは大きな差になりますよね。

販売店やメーカーでは立場上、知識として知っていてもうかつにユーザーに対して案内できない領域なので、当校の受講生やクリエイティブな現場で働く方にとっては、以前より気になっている解決したい疑問の代表格でした。あくまでユーザー責任の元行う作業になりますので細心の注意が必要です。ここでは全て紹介しきれませんが、どの部品やテーマも大好評でしたのでまた機会があれば(受講生限定となりますが)特別セミナーの開催を検討します。

この他、PC が重くなってきたら、または定期的に実施したいメンテナンスで OS 内部のゴミファイルの削除で PC の起動や動作を改善する方法など、ソフトウェア上のテクニックも多数ご紹介しました。一度覚えたら忘れずに定期的に実施してください。不具合だらけの Windows 10 においては、OS のクリーンインストールやリカバリもお奨めです。しかしここでは割愛させていただき、以上で「パソコン自作・修理セミナー」のダイジェスト版としてご紹介させていただきました。


 

最後に、WEBデザインDTPデザインMicrosoft Office 講座の予習、復習、見学向けのWEB公開レッスンでは、過去の授業の様子やテクニックをご覧いただけます。

 

大人のためのはじめの一歩 パソコン入門

通年受講できる、パソコン入門をご利用ください。

はじめてのあなたをできるあなたにチェンジ
第1歩目を踏み出したいあなた。たった1日でデザインやパソコンを学べます。超初心者向けの入門講座をお試しください。(上記のようなパソコンの自作や修理などハードウェアに関する内容は含まれておりません)




PAGE TOP